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ここを気を付けたい口腔トレーニング

自動運動における適切な指示や必要な監督

· 舌,言語聴覚士,歯科,口腔トレーニング

最近よく質問されること

 言語聴覚士や歯科の方からここ一カ月よく質問されたことがあります。それは、

「子どもや脳血管疾患を抱える高齢者の方などへ舌などの口腔トレーニングを指導する時に気をつけた方がいいことはありますか?」

 という内容です。あいうべ体操やMFT、その他にも様々な口腔トレーニングがありますが、気をつけた方がいいことと聞かれたら皆さんどの様なことを思い浮かべるでしょう。

 ちなみに僕自身は上記にあげた口腔トレーニングは講習会などへ参加して勉強したことはないので、直接的にその方法についての注意点などはお話できません。

 ですが新しい口腔トレーニングにであったときには、一度それらを分類してみると口腔トレーニングの時に気をつけた方が良いポイントが見えてきます。

口腔トレーニングの1つの分類

 たとえば筋力を上げたいという時にいくつか分類することができます。

 自分で行うトレーニング(自動運動)~セラピストが他動的に動かす運動(他動運動)、抵抗運動と分けられます。以下に「咀嚼の辞典」に書かれている筋力増強についての項目をまとめたものを添付します。

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 皆さんが日ごろ行っている口腔トレーニングはどれにあたるでしょうか。

 質問を受けた様々な口腔トレーニングはクライアントが自分で舌などを動かすので3)自動運動にあたると思われます。

 ちなみに口腔研修で行う舌など口腔へのアプローチは基本的に2)自動介助運動によるトレーニング方法に近いです。

 さて、自動運動の項目を読んでみると「適切な指示や必要な監督を怠ってはならない」とあります。さらに以下のように続きます。

①適切な姿位・姿勢によって、目的とする筋の抗重力位での正しい運動を行わせる。

②運動の速度、回数、休息などについて患者の状態に合わせて適切な指示をする。

 単純にそのトレーニング方法をやってもらっているのをセラピストが眺めているだけでは「適切な指示や監督」を行っているとはいえないでしょう。自動運動の指導において気をつけた方が良いことの1つ目は「適切な指示や必要な監督を行っているか」です。

 

 自動運動による口腔トレーニングを勉強する時は、どのような指示(運動速度、回数、休息など)が必要で、どのような監督を行う必要があるのかに注目しながら学ぶと実践に繋がりやすいと思います。

 たんにセラピストから言われた口腔の運動を反復するだけで口腔機能が改善していく方は問題ないのですが、そうではない方の場合は特に「適切な指示や必要な監督を行っているか」が重要になってくると感じています。

これでいい?

「これでいい(*´ω`*)?」

必要な監督

 必要な監督に関してもう1点ぼくがお話することがあります。それは以前の記事「舌トレーニング時のポイント(http://site-1363555-8827-3743.mystrikingly.com/blog/eeabb6184a9)」で書いた内容になります。

舌のトレーニングをしているつもりが

・口唇に力をいれて舌を前にだす。

・目の周囲に力がはいる。

・肩に力がはいる。

 など難易度の高い口腔トレーニングに対して様々な工夫をして運動を行おうとします。ここを見逃さないというのも「必要な監督」になるでしょう。

 代償を見逃さない。これは口腔の直接的なトレーニングの場合はそこまで難しく考える必要はありません。

 まず「①どこの筋をトレーニングしたいのか」を(クライアントとも)確認します。舌のトレーニングをしたいのであれば、自動運動でのトレーニングにおいて口唇など「舌以外が動く」というのは、もしかしたら代償運動なのかもしれません。

 「②条件を変えてみる」運動時のスピードや姿勢を変えてみたり、鏡を見ながら舌の運動を行ってみたりと条件を変えながらトレーニングを行ってみて、なるべく舌が選択的に運動できる条件がないか一緒に探してみましょう。

 どんな条件であれば口唇、肩、眼の周りの筋を過剰に動員した舌の動きにならないでしょうか。

 「③ちょっとした変化も気付いたらフィードバック」これはとても大切になります。

「いまのでいいですよ」

「いまの動き良かったです」

「さっきよりも舌が動いてますね」

 どんどんポジティブなフィードバックを返していきます。特に見えない口腔の動きの練習なので、いまの運動が良いのかどうかクライアントは分かりにくいです。代償運動がでないような条件を探していきつつも、どんどんフィードバックしましょう。

 また口腔において見た目の(セラピストにとって)小さな変化が、食べるや話すといった活動における大きな変化に繋がる場合もあります。月に一度の診療であっても、毎日のリハビリテーションであっても、いかに小さな変化に気付き伝えていけるかが大切です。

 口腔研修で行うのは自動介助運動になるので、基本的に常に視診や触診をとおしてクライアントの反応を見ながら舌などの誘導を行っていきます。続けていくと必然的に口腔の観察力は鍛えられていきます。

 (口腔研修:http://site-1363555-8827-3743.mystrikingly.com/#s-r-touch-oral

 咀嚼の辞典では自動介助運動について以下のように書かれています。

① 収縮を起こすべき筋の感覚を記憶させるために、正しい運動の方向を理解させる。

② 介助は運動が行える範囲でできるだけ少なくする。

③ 他の筋による代償運動を行わせないようにする。

④ 筋運動の感覚を十分にフィードバックさせるために、ゆっくりとした運動を行う。

 4つの項目を忠実に守った口腔トレーニングを行おうと思ったらとても難しいです。口腔研修ではいろんなワークを通して、①~④の項目に則った方法で舌へアプローチできるよう繰り返し練習練習します。

 もしいま自動運動での口腔トレーニングの指導を行っている場合、その以外の自動介助運動、他動運動、抵抗運動も習得し、それぞれ必要に応じて行えるよう練習していきましょう。

 ちなみに抵抗運動に関して、舌圧子などを使って舌で抵抗運動を行うことは殆どありません。しかし特に提舌時に舌尖が反り返るような子どもさんに対し、口腔トレーニング時に(座位や腹臥位で)舌の運動方向の誘導を行いながら、同時に上肢に対して抵抗運動を行うことはあります。

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 今日も1人1人のクライアントから学び、評価の視点も磨いていきましょう。

まとめ

・自動運動では適切な指示や必要な監督を怠ってはいけません。

・ちょっとした変化に気付き伝えられるよう日々トレーニングしましょう。

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