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奥舌を下げて良い声を

舌尖、軟口蓋、舌骨から奥舌へアプローチ

· 舌,言語聴覚士,構音障害,摂食嚥下,歯科

遠位部と舌

 地面と身体の位置関係を見たとき、頭部は床から最も離れた場所に位置しており、頭部のなかでも動きの自由度が高い舌は、様々な身体部位からの影響を受けます。

 背臥位や座位にて骨盤の位置を前傾、後傾と誘導していくと、骨盤の位置によって舌の動かしやすさ、声の出しやすさが変化する場合があります。

 さて今回のメインは遠位部ではなく、比較的舌の近くのお話です。

近位部と舌

 今回は舌を前方(前舌)と後方(奥舌)に分け、特に奥舌の機能を高めるために考え方を学んでいきましょう。

 前回の記事では舌尖について多く書きましたが、奥舌も食べるとき、話すときには大切な役割を担っています。

 話すとき、特に高いパフォーマンスを発揮しようと思えば「声の響く空間のコントロール」が大切になってきます。これを担っているのものの一つは奥舌の下方への運動になります。

 特に声のお仕事をされている方のなかには、奥舌の上下運動のトレーニングは重点的に行っている方もいらっしゃると思います。

 楽に奥舌が下がればいいのですが、全員がそうだとは限りません。

 舌の得意な運動方向を評価したさい、たとえば開口した時点で舌が後方へ引きこまれ、奥舌が上がってしまう状態であれば、奥舌を下げようと意識しても、奥舌を下げるのはなかなか困難となります。

 そのような方の場合、奥舌を下げているつもりが、鏡を見ていると、舌を挙げよう挙げようとしていることあります(得意なんです)。

 舌を下げるって難しい。どうやったら舌を下げる感覚をつかめるでしょう。

 その時の目的とする活動に合わせて、奥舌を含めた舌が前後、左右、上下とあらゆる方向へ動けるよう、評価、そしてアプローチを行っていく必要があります。

 徹底的な反復トレーニングでも舌の可動域は変化していくと思いますが、もし口腔の専門職が口腔トレーニングに関わるのであれば、以下のように考えます。

 「どうしたらもっと効率よく、舌の可動域、そして機能が向上するだろう。」

 そんな疑問を解消するために大切なのはやはり評価。奥舌の評価とアプローチを考える際に、少なくとも以下の3つの部位(前舌、軟口蓋、舌骨)は評価を行います。

余談:

 ここ数年、舌マニアな歯科の先生方と一緒に学ぶ中で、歯列や歯の形状が舌におよぼす影響をこれでもかと教えて頂いています。奥舌にも影響は大きいのですが、言語聴覚士としてその場でアプローチできる事ではないので、今回は内容に含みません(歯科との連携大切!)。

① 前舌

 触診:舌の表面へそっと触れ(押しません)、舌へ触れる圧は変えず、そのまま徒手的に舌を前方(口腔外)へと誘導します。

 その際、奥舌の筋緊張を高め、前舌の筋緊張は低い状態というように、舌の前後で筋緊張の差が明確に異なるのを触れている指に感じる場合があります。

 視診:前舌の緊張が低い方のなかには、舌を前方に出す際、下の歯を乗り越えるように出される方もいますので、どのように舌を前方へ出してくるのかを注意して観察してみてください。

 介入:そういった場合、間接訓練として舌の可動域トレーニングを行うと、力の入りやすい奥舌を過剰に使いながら舌を動かす可能性がありますので、「トレーニングしたい舌の部位に収縮が入るよう」、細い棒などを使いながら丁寧に舌の評価、トレーニングを行います。

 再評価:前舌に筋収縮が入るようになった時、奥舌の過度な筋緊張が軽減しているかもしれません。前舌の機能が改善した後、もう一度、触診、視診を行ってみましょう。

 前舌と奥舌の関係については前回の記事でもふれています。

(参考:http://site-1363555-8827-3743.mystrikingly.com/blog/ce53172c280

② 軟口蓋

 軟口蓋を構成する筋と奥舌には協調関係があると舘村先生の口蓋帆咽頭閉鎖についての講義で教わり、それ以降、奥舌の機能を見るときは硬口蓋~軟口蓋、そして口蓋垂の方まで丁寧に触診しています。

 触診:硬口蓋も部位によって硬さに違いがあるのですが、硬口蓋~軟口蓋の移行部も同様に触診すると触れる場所によって硬さが異なるのに気付きます。

 視診:健常者であっても軟口蓋の形に左右差がある方、口蓋垂が短くなっている方もいますので、視診(安静時、運動時)もしてみましょう。

 介入:とくに硬い部位に優しく触れ、数ミリずつ左右に指をスライドしていると、硬さが変化していきます。先に口腔外から硬口蓋~軟口蓋の緊張を軽減してから触れると不快感が軽減されやすいです(口腔研修②の実技内容)。

 大前提として安心できる空気間をセラピストが作ること、そして何をするのか丁寧に説明を行うことが大切です。タッチはホントにホントに丁寧に。そして無理はしない。

 再評価:同じように視診、触診を行ってみましょう。上手くアプローチできると、軟口蓋の形がその場で変化することもあります。また軟口蓋の柔軟性が変化したことで、奥舌の筋緊張、可動性も変化があるか評価を行いましょう。

③ 舌骨

 舌骨は舌骨上筋群を介して舌との連結があります。また舌骨は人によって形も大きさも異なりますので、解剖の本に書かれている形を鵜呑みにせず、実際に触診して確認してみましょう。

 触診:舌骨はどの様な形でしょうか。また舌骨は左右もしくは頚椎方向に引っ張られていたり、回旋していたり、傾いていたりもします。自分の舌骨はどの様な状態でしょうか。

 視診:中には見た眼で左右への偏位や傾きが分かるような方もいらっしゃいます。

 以前から舌骨は指で把持し、可動域の評価、そしてアプローチを行っており効果もあったのですが、より効率を求めるなかで、評価、アプローチ共に変化していきました。

 大きく異なるのは、舌骨の可動性を評価する際に、「舌(特に奥舌)の筋緊張を感じながら舌骨の可動性を評価する」点です(口腔研修③で行う予定です)。

 舌を意識せずに舌骨の可動性を評価するのと、舌骨に触れた指で舌の筋緊張を感じながら舌骨の可動性を評価するのでは評価の結果もアプローチも大きくことなります。

 ちょっと難易度は高いですが、ぜひ両方の違いを感じられるようになりましょう。

 介入:特に舌の筋緊張を感じながら舌骨の可動性を評価できたらアプローチは簡単です。その舌骨の最終可動域で待っていたらゾワゾワッと舌の筋緊張まで変化していくのを感じると思います。

 この舌骨の評価とアプローチができたら、次はより効率の良い方法として頸部回旋を応用したアプローチもお伝えしたいと思います(口腔研修③)。

 再評価:今回もやはり舌骨の可動性のみではなく、奥舌の可動性も再評価しましょう。

一つ一つ丁寧に

 前舌、軟口蓋、舌骨。一つ一つ丁寧に評価を行い、アプローチを行っていくと、奥舌を下げる感覚を効率よくつかめるかもしれません。

 

 奥舌がより自由に動きやすくなるよう、影響因子の評価、介入を行いながら、奥舌の下方への可動域を引きだしていきましょう。

 

 子どもたちを見ていると、奥舌を上顎方向へ持ち上げようとすると、内舌筋を過剰に固めてしまい、上方に上がりにくい子をよく見かけます。

 

 そんな場合も最低限3つの評価を行ってみると、何か気付きが得られるかもしれません。また現在、そのような子どもさんなどに対する、眼球運動を応用した奥舌の上方可動域を引きだす応用アプローチも検証中です。

 

 めざせ良い声!

 その為の舌の上下運動。前舌、軟口蓋、舌骨。奥舌を下げる感覚を効率よくつかむために、丁寧に口腔機能を評価しながら、いろいろ工夫してみましょう。

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