見えない口腔
食べるとき、話すとき、口腔内では複数の筋が同時に動いています。その殆どはオートマチックな動きであり、どこの筋を動かしているかなんて意識もしません。
言語聴覚士、歯科、看護師など医療に関わる方であれば、口腔の筋の解剖学を学びますが、そんな医療職(言語聴覚士は除く)であっても、発音の時に口蓋垂が動いているのを知らない方もいて当然です。
先日、奥舌を下げることをテーマに記事を書きましたが、舌の得意な運動方向が奥舌を持ち上げるような後上方であった場合、本人は奥舌を下げているつもりでも、口腔内を見てみると反対方向である上方に舌を持ち上げてしまっていることがあります。本人ビックリです。
それだけ、見えない口腔の筋を自由に動かすのは難しいのです。
「舌を挙げてください」と言われたとき、
舌を挙げる動きが苦手な方ほど、自分が使いやすい筋を総動員します。
するとセラピストの意図する動きではなかったり、運動方向はあっていても本来はそれほど使う必要のない筋まで力を入れて舌を動かしてしまうかもしれません。
口腔専門職は口腔の解剖の知識もあり、それらの各筋がどの様に動くか分かったうえで、「舌を挙げてください」と指示していると思いますが、口腔の筋なんて全く意識したこともない方(子どもも大人も)であれば、その「舌を挙げてください」「た、た、た」などという指示に対し、セラピストの意図する動きを正確に再現出来るのは奇跡だと思っていいでしょう。
まずは知る
口腔のイラスト、口腔模型など、クライアントが分かりやすく口腔のこと、そして今の口腔の状態を知ることが出来る手段で情報提供をしましょう。
先日、自分の口腔模型を作って頂いたので、小児歯科医院で子どもたちやご両親に舌の動きを説明する時には口腔模型を良く使っています。
口腔のこと、食べるときや話すときの舌の動きのことを知ったうえで、自分で口腔の筋を動かしたら何か変化があるだろうか?
その時の動きは頑張っていないだろうか?と評価していきます。
情報提供と合わせて
それでも難しい運動方向もあると思います。みんなが初めから良い舌の緊張状態とは限りません。
人によっては舌の緊張に左右差、前後差がある場合もあります。または得意な運動方向とは反対の方向には舌を動かしにくいかもしれません。
その動きが難しい背景を丁寧に評価する必要があります。口腔内の硬組織の形状、舌の形、舌の緊張、舌の刺激に対する反応パターンなど視診や触診、条件を変えたりと丁寧に評価し、再度説明を行います。
その方が理解しやすい工夫を
口腔に関する情報、今の口腔の状態などを説明するとき、僕自身もっと工夫していきたいと考えています。視覚的にも分かりやすい説明がどうやったら出来るか、評価内容も含めて多職種で話しながら作っていきたいです。