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発語失行と舌

舌への非言語的アプローチ手法を持っていることの重要性

· 舌,発語失行,構音障害,失語症,言語聴覚士

舌はどこにある?

 舌は皆さんのお口のなかにあって、口を開けた時以外は見えません。お口のなかにあるからこそ、舌の大きさや、発音の時に舌がどの様に動いているのかは日ごろ殆ど意識しない上に、そもそも分かりにくいです。多くの方は舌の本来の大きさよりも、自分の舌を小さく感じている方が多い印象です。

 突然ですが、人は「その人にとって難易度が高い課題」を行おうとすると力んでしまいます。

 たとえば子どもの時に練習した逆上がりや逆立ち。今ぼくがチャレンジしたら、全身いろんなところに不必要な力が入ってしまう(力む)と思います。字を書くときやパソコン入力の時に肩に力が入って、無意識に肩が上がってしまう人もいます。

 視覚的に明らかに力んでるのが分かる場合もあれば、見た目では分かりにくい時もあります。たとえば口腔内、特に舌が力んでいるとき、そもそも口腔内は見えないので力んでいることを見落としがちです。

口腔機能のバラツキ

 先きほど、「その人にとって難易度の高いこと」と書きましたが、これは口腔が関わる活動にも同様のことが言えます。

 食べる、話す、楽器演奏(サックスやトランペットなど)、歌

 これらの活動には口腔機能が大きく関わります。なにをしたいかによって必要な口腔機能は変わります。人によっては様々な身体部位で過剰に力みながら、話したり、楽器演奏をしたりすることもあるでしょう。その場合、本人に力んでいる自覚がある場合と全く自覚がない場合もあります。

 全く自覚がない場合もあるなかで難しさを感じるのは「その人にとって」という部分です。人によっては(健常者でも)、「口を開ける」というシンプルな課題であっても、舌が力んでいる方もいます。

 口腔機能は意外と人によってバラツキが大きく、人によってどの様な戦略で目的とする活動を行うかは異なります。この口腔機能のバラツキについては、口腔研修(S₋R touch Oral)でもっと掘り下げていきます。

発語失行

 健常者であっても口腔機能にバラツキがあります。一方で、運動障害性構音障害、発語失行、顔面神経麻痺などを抱える方の場合、その口腔機能のバラツキはより顕著になりますし、「その人にとって」という部分もより細やかな評価を言語聴覚士の方はされていると思います。

・安静時から口腔周囲筋の力みがある場合。

・発音する時にさらに口腔周囲筋が力む場合。

・足の指まで力を入れながら発音される場合もあります。

 さて安静時の口腔周囲筋の力みも軽減しなければなりませんが、おそらく厄介なのは発音する時など「活動時の」舌を中心とした口腔周囲筋の「力み」。これを何とかする必要があるのですが、どうすれば良いか悩んでいる言語聴覚士や歯科衛生士などの口腔専門職の方も多いと思います。

 失語症や発語失行などにおいて、舌の筋緊張の影響が音声表出時にどれ程の影響があるかは丁寧に評価したいところです。ところが言語理解力の障害があられる場合などには、舌の筋緊張の影響が評価しにくいことがあります。

 そんな時は、実際に口腔周囲筋(舌など)へアプローチしてみて、その結果から舌などの筋緊張の影響を評価していきます。介入を通した評価を行う時、効率よく舌の緊張を軽減する手段を持っていると、障害の背景を把握しやすく、セラピストとして強みになります。

まずは評価

 悩んでいる時にはついつい解決策(アプローチ方法)を探しがちですが、大切なのは評価です。特に僕がよく行う評価は「舌の得意な運動方向、苦手な運動方向」の評価になります。

(舌と重心: http://site-1363555-8827-3743.mystrikingly.com/blog/f550264cdc5

(舌の評価: http://site-1363555-8827-3743.mystrikingly.com/blog/0b6daed92d7

 よく観察される得意な運動方向が「口腔の後方(軟口蓋の方)へ舌を引き込む」という場合。後方へ引き込む方向が得意な運動方向であったら、発音にとって、呼吸にとって、発声にとって、嚥下にとってどの様な影響(メリット、デメリット)があるでしょう。

 この舌の得意な運動方向の評価。僕は3つの条件下での評価を基本に、目的とする活動によっていくつかの評価を組み合わせて、総合的に判断しています。

3つの条件下における舌の評価

① 開口時の舌の運動方向、緊張の変化

② 舌へ触れていく際の舌の運動方向、緊張の変化

③ 舌へ触れた時の舌の運動方向、緊張の変化

 下2つはアプローチを通した評価になります。まずはこれらの条件下における舌の反応パターンから、舌の得意な運動方向を判断していきます。そして発音、発声、呼吸、嚥下、楽器演奏にとっての影響を予測します

 得意な運動方向、苦手な運動方向と目標とする活動とを関連付けながら評価しておくと、その後、舌の楽に動ける運動方向が拡大したとき、「その人にとって」その変化にどの様な意味があるのか、という意味付けもしやすいです。

逆にこの関連付けの作業ができていないと、

「舌の可動域が増えた」⇒「で?」

とセラピストの自己満足になってしまいます。

もちろん頭のなかで関連付けを行うだけでなく、その後に実際に飲み込みはしやすくなっているのかなど、実際に検証も行う必要があります。

 余談ですが、嬉しいことに最近、言語聴覚士や口腔に関わる専門職を対象とした姿勢などの研修が増えてきました。そういった研修で学んだことを実際の臨床に活かそうと思ったら評価の順序が大切です。

 

 まずスクリーニング、そして活動レベルの評価(食べる、話す)を行い、口腔内における舌などの得意な運動方向、苦手な運動方向の評価を行ったうえで、姿勢などへのアプローチが行えると理想だなと考えています。

 そのような順序で評価を行う利点として、例えば姿勢が変化したあとに、口腔内における変化した点、残存している課題が評価しやすいことがあげられます。

 

 逆にいうと、口腔の評価が曖昧なまま、上下肢や体幹のアプローチすると、活動レベル(食べる、話す)の変化はするが、その後に何をしたらよいのだろうと疑問が生まれます。

 ここで丁寧に口腔機能の評価を行っていると、残存している口腔の課題に対して直接アプローチを行うことができます。もしくは口腔と姿勢など、どちらからアプローチするべきなのかを最初の評価の段階で検討することができます。

2種類の口腔へのアプローチ

 さて、舌へのアプローチは大きく2種類持っておくことをお勧めします。

① 直接、舌へふれて舌の知覚や可動域を改善する方法

② 口腔内にふれずに、舌の緊張(活動時の力み)を軽減する方法

 ①舌へ直接ふれて行うアプローチはコツがあるので、ぜひ「自分の身体で体感」してほしいです。これを知らないと、舌の動きを改善したいのに舌の動きを阻害してしまいます。

 舌の可動域を引きだすときに大事にしているのは

「押さない、引っ張らない、頑張らせない」

 これを忠実に行っていくと、2つのことに気付きます。

① 健常者でも舌の苦手な運動方向がある。

② 舌の可動域はその場で変化していく。

 舌が楽に動ける範囲は健常者であっても予想以上に狭いです。まずは臥位や座位などの静的な場面で舌の動きをリードが出来るようになったら、より効率を考えて、立位や腹臥位での口腔トレーニングを行っていきます(セラピスト側の難易度は高めです)。

 舌へ触れるときのセラピストの指は、水面に静かに浮かぶ手をイメージしてください。少しでも水面に指が沈んではいけません。実際にお風呂で水面に手を浮かべてみると、イメージしやすいと思います。

 もう一つ研修の時にお伝えしている、舌へ触れるアプローチを行うときに大切なポイントがあるのですが、それはまたの機会に書きたいと思います。

http://site-1363555-8827-3743.strikingly.com/blog/eeabb6184a9

 そして②口腔外から舌の緊張へアプローチする方法。言語聴覚士としての臨床が始まってからずっと考えていたのは、

 発音や発声など活動時の無意識に入ってしまう口腔周囲筋の力みを抜きたいということです。

 これをいかに効率よく出来るかがポイントです。

口腔外からアプローチする手段を持つメリット

・発音や歌など活動時の力みに対してアプローチできる。

・言語理解の低下(失語症、認知症など)があられる方に対して、

 口頭で「力を抜いてください」と言わず、口腔周囲の緊張を軽減できる。

・嫌がったり、過敏などで口腔内を触れない場合にもお互いストレスなく口腔内へアプローチできる。

 トランペット演奏でも同じことが言えます。例えばタンギングなど難しいことを行おうとすると力みます。この活動時の力みを抜くことが出来ると、その瞬間に誰が聴いてもわかるような音色の変化がおこります。

 または苦手な発音の練習をしている時に、行うと舌の余計な力みが抜けるため、活舌トレーニングの効率もよくなります。

まずは

 上述した2種類の舌へのアプローチ。これらは口腔専門職の必須技術にしたいと思っています。この記事を読んだ方も興味を持っていただけたら嬉しいです。

 実際にアプローチ方法を習得する前でも出来ることがあります。それはやはり評価です。

 上述した3つの評価から舌の得意な運動方向を評価すること。その上で状況と目的に合わせて、アプローチの手段を選択していきます。このときに選択枝として①口腔内へ直接触れる、②口腔外から口腔内へアプローチ、③その他といろいろ手段を持っていることが大切です。

 実際に口腔研修(S-R touch Oral)では評価からアプローチ(①、②など)の実技を中心に進めながら、口腔内の評価の視点も深めていきます。ぜひ口腔の面白さを一緒に学びましょう。

☆S-R touch Oral 研修の詳細はこちらからご確認ください。

http://site-1363555-8827-3743.strikingly.com/#s-r-touch-oral

❀ 今回のポイント ❀

・その人にとって難しい課題は全然違う。

・運動方向という視点で口腔を評価してみましょう。

・口腔へのアプローチ手段として

 舌へふれるアプローチと口腔外からのアプローチを持ちましょう。

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